三月四日は何をして過ごそうか。
手帳を開けた僕は、白いままの枠を眺めてふと思った。
たまにはなにか文化的な。心を磨くような時間にしたい。
そうだ
やまもも、行こう。
やまももシンフォニックバンドという吹奏楽団が、
5周年を記念した演奏会を開催するらしい。
以前にネットか何かで見かけた、
ゆるいピンク色のキャラクターを思い浮かべた。
あれじゃ“やまもも”じゃなくて“梅干し”じゃないか。
演奏会の会場は荻窪。中央線で新宿から15分。
アクセスは申し分ない。
開演時間は14:00。恐らく終演は16:00頃。
せっかくの休日、より充実させるためには
早起きして演奏会の前にも何か予定を入れたい。
まずは朝食から。
休日の朝はカフェでゆったりとエンジンをかける。
読みかけの小説を持っていってもいい。
淹れたてのコーヒーの香りにつつまれながら、
いつもの慌ただしい朝を静かに上書きするのだ。
香り高いコーヒーで頭を起こしたら、
天沼八幡通り商店街を通って「天沼弁天池公園」へ向かう。
緑豊かな日本庭園を眺めて深呼吸。
「セブンスデー・アドベンチスト天沼教会」の神聖な雰囲気を感じたら
レトロな雰囲気の「教会通り商店街」を通って駅へ戻る。
そうこうしていると急に空腹感を覚えた。もう昼時か。
確か人気のカレー屋があったはず。
駅の反対側になってしまうがせっかくだ。行ってみよう。
薬膳料理のような香り高いスパイスを味わったら、
いよいよ、今日のメインイベントである。
駅をこえて北口へ。
客層は老若男女幅広い。
僕のように一人で来ている人も少なくないようだ。
演奏メンバーは20代が中心。
指揮者は多くのスクールバンドを指導している甘粕宏和氏。
プログラムは知らない曲ばかり。
楽しめるかどうか心配だったが、そんな心配は一瞬で吹き飛んだ。
会場を満たす豊かな響き。生き生きとした演奏者の表情。
若く荒削りな演奏だが、温かみと深みのある演奏だ。
作曲者のトークや、本格的なオペラ歌手とのコラボなど、
演出もとても凝っていて楽しめた。
心が満たされた。
そんなキザな言葉がふと頭をよぎる。
翌日からの仕事も明るく頑張れそうだ。
音楽には心を癒やす力があるって本当だった。
いや、きっと“やまもも”だったからだな。